富山家庭裁判所高岡支部 昭和53年(少)49号 決定 1978年3月09日
少年 I・I(昭三四・八・二八生)
主文
1 昭和五三年少ハ第一号事件について
少年を満二〇歳に達するまで中等少年院に戻して収容する。
2 昭和五三年少第四九号事件について
同事件について少年を保護処分に付さない。
理由
第一昭和五三年少ハ第一号事件について
1 少年の陳述及び本件関係記録によれば以下の事実が認められる。
少年は、昭和五〇年一二月二三日当裁判所で、虞犯、窃盗、道路交通法違反保護事件によつて中等少年院送致決定を受け、富山少年学院に収容され、昭和五二年一月同学院を仮退院して富山県高岡市○町×番××号の父I・Tの許に帰住し、富山保護観察所の保護観察下に入つたものである。
(一) 少年は、仮退院後一旦は鉄工所に勤務したが、従前の非行の共犯者であるAに誘われ夜遊びをするようになり、仕事を怠休し次第にその意欲もなくし、一か月もたたずに退職してしまつた。その後少年は、定職につくこともなく、Aらの遊び仲間とパチンコ、ゲームセンター、喫茶店等に出入りして無為徒食の生活を続け、仲間らのアパートに入りびたるなどして無断外泊を繰り返し、さらに遊興費捻出のため、仲間等の紹介によつて仕事については短期間でやめるということをなし、定職につかなかつた。
(二) 少年は、昭和五二年八月ころから、暴力団関係者であるBと知り合い、その組織である「○○連合会」事務所に度々出入りし、その関係者らと交際していた。
(三) 少年は、昭和五二年一一月初旬ころから翌五三年一月一七日までの間、少くとも四回に亘り、自宅などでトルエンをナイロン袋に入れて吸入し、かなりその影響を受けている。
(四) 少年は、昭和五二年四月六日から一六日までの間、福井県下の建設現場に旅行し、同年一二月四日から○○○○方へ転居したが、いずれもその間の事情を担当保護司に連絡せず、さらに担当保護司及び保護観察官の再三に亘る指導を無視して同年一一月以降保護司への訪問を怠るようになり、完全に保護観察より離脱した。
以上の少年の行動は、仮退院に際し、少年が遵守を誓約した中部地方更生保護委員会の法定遵守事項及び特別遵守事項((1)無断外泊は絶対にしないこと、(2)職場に落着き真面目に働くこと、(3)意思を強く持ち、悪友の誘いには決して同調しないこと、(4)保護司を毎月二回以上訪ね、良く指導、助言を受けること)に違反した。
2 少年の以上の行状からみて、このままでは保護観察によつて少年の生活状況を建直し更生を図ることが難しく、非行を将来に亘り繰り返す虞れが強く、また保護者の監護能力にも期待できないことからすれば、この際少年を中等少年院に戻して収容し矯正教育を受けさせる必要がある。
ところで、少年に規律ある生活を身につけさせるには、是非とも職業に就くことの意義を熟知させる必要があり、そのためには少年の適性にあつた職業指導訓練をなすことが重要であると考えられ、さらにそれを少年が一応身につけた時期に社会内処遇に移行させ、強力な生活指導(家庭の対応及び従来の仲間との切り離しなどを含め)のもとに、仕事への意識、意欲を高めることが望ましいと考えられる。そこで、当裁判所は退院後の指導の必要性を重要なものと認め、それを含めての少年の改善更生期間を考慮して、満二〇歳までとするのが相当と認める。
よつて、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則三七条一項、五五条、少年法二四条一項三号を適用して、主文第一項のとおり決定する。
第二昭和五三年少第四九号事件について
毒物及び劇物取締法違反保護事件は、第一の戻し収容申請事件と併合審理し、既にその理由(第一の1(三))ともなつているものであるから、もはや保護処分の必要性を認められないので、少年法二三条二項を適用して、主文第二項のとおり決定する。
(裁判官 安藤宗之)